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広報誌Web版『転倒予防につなげる知識と運動』

皆さんこんにちは。だんだんと朝晩も冷え込みはじめましたね。これから少しずつ寒さが本格化し、布団から出たり、外出するのが億劫になってきます。生活のリズムが乱れないようにしましょう。

今回は、『転倒予防につなげる知識と運動』について紹介していきます。

 

はじめに

介護予防のためには、規則的で活動的な生活習慣や余暇活動を持つことが重要であり、いつまでも楽しく健康に過ごすために、レクリエーションを通し、寝たきりの原因の上位である「転倒」の予防につなげていきましょう。

方法

転倒により引き起こされる可能性がある、寝たきりに繋がる要因として「骨折」がありますが、これらを防ぐには2つの方法があります。

まず1つ目は「転ばない」こと。2つ目は「転んでも骨折しない」ことです。つまり、転倒防止策には、「環境的側面」と「身体的側面」に関するものがあります。

環境的側面

  1. かかとのない履物は避ける(履物が脱げたことによる転倒を防ぐ)
  2. 段差をなくす。階段等にすべり止めを施す。手すり等
  3. 整理整頓をし、動線には座布団や電気コード等のつまずきに繋がりそうなものは置かない。
  4. 睡眠時には小さな明かりをつけておく。

 

これらのような転倒予防策をとると良いと思います。

例えば、深夜も転倒の起こりやすい時間帯のひとつです。排泄のため、深夜に起きることがあると思いますが、おぼろげな状態で寝室、ベッドからトイレまでの移動の際に、転倒が起こりやすいと考えられます。上記の予防策で転倒を避けることが出来る可能性が上がると思います。

真っ暗じゃないと寝られないという方は、枕の近くに懐中電灯などを置くというのも予防策になると思います。

身体的側面

転倒予防に必要な運動として、筋力アップ、関節の柔軟性、バランス能力、瞬発力等の能力の工場、これらの為の運動に重要性があります。

まずは、「転ばない」基本的な身体づくりのために、筋力アップとストレッチを行います。この中でも4つのポイントが重要です。

 

  1. 足を引き上げるために、太ももの前(大腿四頭筋)を鍛える運動
  2. つま先を上げるために、すね(前脛骨筋)を鍛える運動
  3. 足をより高く上げるために、関節(股関節)の可動域を広げるストレッチ
  4. バランスのよい柔軟な身体(足首)をつくるストレッチ

 

 

これらの運動は、マシン等を使用しなくても、ベッド上や座位でも下肢を浮かせたり、膝を曲げ伸ばしたりして自分の身体を負荷にしたり、チューブやボールを使うなど手軽な運動でも筋力アップは可能です。しかし利用者の状況や意欲、興味、生活スタイルなどに合わせて、運動を取り入れることが大切です。

転倒を予防する為の、「コーディネーション能力」

転倒を予防する為に重要となるもう一つの点が「コーディネーション能力」です。

コーディネーション能力とは、目や耳などの五感でとらえた情報を脳で処理し、神経を伝って筋肉を動かすという一連の運動プロセスを、瞬時に適切に行うための能力のことをいいます。

例えば、「転倒しそうになった時に、瞬時に手すりをつかむことができる。」「バランスを崩した時に、反射的に足を出しすぐに体勢を立て直すことができる。」といった素早い身のこなし等の能力のことです。

今回は、このコーディネーション能力を身につけ向上させるために、ボール運動のレクリエーションを紹介いたします。

1)実施の際のポイント

ボール運動の実施するにあたっての注意点

  • 実施の前に準備運動を行う。
  • ボールに夢中になるあまり、思いがけない動きをすることがあるため、イス等から転倒したりしないよう気を付ける。
  • 運動が激しくならないよう、利用者の様子に注意し、無理をせず適度な休憩をとる。
  • 利用者それぞれのレベルに合わせ、ADLや残存機能に着目し、スピードや難易度に変化をもたせる。

 

 

運動の実際

  1. 動かす(肩や太ももなどにボールを当ててマッサージする)
    <方法>
    片手、両手をしっかりと動かしマッサージする。他の人の方や背中をマッサージする。
    <解説>
    しっかりと手を動かすことによって、手をうまく動かすための能力を向上させる。
  2. 回す(胴の周り、太ももの周り)
    <方法>
    ボールをおなかや、太ももの周りで回す。
    <解説>
    身体の背後でボールを手から手へ渡すときには、目で確認できないため感覚で行う必要があり、自身のボディイメージを向上させることができる。太ももを上げて足の周りを回すときには、手と足が同時に動かすため、脳と神経と筋肉を連動させる能力を向上させることができる。
  3. 乗せる(手の甲に乗せる、乗せてジャンケンをする)
    <方法>
    ボールを手の甲に乗せて落とさないようにバランスをとる。もう一段階レベルアップさせたい時は、片手の手の甲にボールを乗せ、落とさないようバランスをとりながら、もう片方の手でジャンケンをする。
    <解説>
    左右で違う動作を行うことで、脳や神経系に働きかけ、姿勢の安定や繊細な動きを向上させる。
  4. 投げる・取る(的などに向けて投げる、キャッチボール)
    <方法>
    自分で投げ上げたボールをキャッチしたり、他者とキャッチボールをする。
    <解説>
    瞬発的な反応能力が高まり、また、ボールをキャッチすることを通して、空間認知能力も高める効果がある。
    さらに、レベルアップさせるには、二人でお互いに向かい合って、同時にボールを投げ合うようにすると、より難易度が上がると考えます。
  5. 転がす。踏む(足の裏で転がしてマッサージする)
    <方法>
    イスに座り、ボールを足の裏で転がしたりすることで足の裏を刺激する。
    <解説>
    足の裏全体を刺激するようにさまざまな動かし方をすることで、神経系の改善を促します。また、指でボールを挟むことで、足の指の運動になり、立位でのバランスをとる際に必要な能力を高めます。

 

 

おわりに

今回の、転倒予防につなげるボールを使ったレクリエーションをご紹介はいかがでしたでしょうか。ボールを使った運動は一人でも可能なものもありますが、ご家族等と同居されている方は一緒に行うことでコミュニケーションもとれ、なお良いかもしれませんね。テレビを見ながらなどリラックスした状態で気軽に行ってみてください。

 

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